追い出し猫のお話をもう一つ。
H君は小学4年生。
電車が大好きで、漢字が得意です。
いつもニコニコと笑っていて、とても可愛い男の子です。
塾で私が質問を投げかけると、ちょっとはにかんだまま何も答えません。
待っていると、首をかしげて黙っています。
「こうかなぁ」 と聞いてみると、「そうそう」と言う時もあるし、黙ったままの時もあります。
あの沈黙の時間、彼の頭の中には何が浮かんでいるのだろう?ずっと知りたいと思っていました。
追い出し猫を描いた時も、みんなが終わった頃ようやく下書きを始めました。
ゆっくり、丁寧にレイアウトし、慎重に色を選んでいました。
そして、素敵な作品を作り上げました。
きっと彼は、書き始めるまでの時間、紙芝居のお話を反芻し、自分なりの追い出し猫のイメージを作り上げ、そのイメージと自分の気持ちがぴったりくるまで、熟成させたのでしょう。
作品からそれが伝わってきます。
仕上がった時の顔がとても満足げで、私は心から、彼がやり通すのを待ててよかったと思いました。
「待つこと 」「 信じること 」
頭ではわかっていても、 つい忘れがちなこのキーワード。
でも、待って、信じれば、一人の力で、こんな素晴らしい作品を作ってくれるのですね。
心と言葉が、繋がるまで、熟成されるまで、待つことの大切さを教えてもらった出来事でした。
ただ、その後私の家で作文を書いたのですが、うちの窓から新幹線が遠くに見えるため、早く自由になって存分に見たかったのでしょう。
彼は、すごいスピードで作文を書きました。
というオチまでついた、楽しい一日となりました!
H君。一人の時間を満喫中。 頼もしい限りです。
公開日:2018年08月30日(木)
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